確実に新規出店を成功させるには、事前準備が不可欠です。
事前準備に不備があると、開店した後大きな問題を引き起こすおそれもあります。
また、開店後は忙しく問題を解決することもままなりません。
そこでここでは、モレなく開店準備を進めるため、新規出店に必要な開店準備を全て紹介していきたいと思います。
チェックリストとしてもご活用ください。
スタートからつまづかないための開業資金の見積もり方
飲食店にはさまざまな業種業態があり、立地も多岐に渡ります。
そして立地が違えば、貸し店舗の保証金もぜんぜん違います。
そのため、開業資金がどれくらいかかるかはまちまちです。
それでも一応の目安を紹介すると、個人経営の小規模店なお店の場合、1000万円~3000万円あたりになるでしょう。
しかし、相場より大事なことは、実際にかかる費用を自分ではっきりと確認することです。
言い替えれば、 綿密な資金計画を立てるということです。
たとえば、おおまかな開業資金の金額なら、すでに開業しているお店と親しくなれば教えてくれるでしょう。
また、飲食店経営の専門雑誌を見れば、いろいろなモデルケースが紹介されているのでそれを参考にすることもできます。
しかし、いざ開業するとなると、なかなか事前の予定通りにはなりません。
部分的には似たような金額で収まっても、ほかの部分で費用がかさむこともよくあります。
たとえば、物件取得費が予定以上にかかってしまったとか、内装デザインの工事費洋画想像以上にかかってしまうといったケースです。
資金に余裕があれば、多少余計にかかっても問題ないかもしれません。
しかし、通常は自己資金だけで開業することは難しく、金融機関からの借り入れに頼ることになります。
しかし、準備した資金が足りなければ開業自体が危うくなってしまいます。
なんとか不足分を補ってオープンにこぎつけたとしても、借入金は返済しなければなりません。
無理を重ねてオープンはしたけど、思うように売上が上がらず資金繰りでつまずくことは少なくないのです。
開業で最も気をつけなければならないのが、この開業資金の見積もりです。
飲食業の粗利益率は群を抜いて高いです。
しかし、粗利益率は利益ではありません。
売上高から原材料費を引いた金額が粗利益で、家賃や人件費、水道光熱費などの費用は、粗利益から支払うことになります。
さらに、借り入れをしている場合は、返済分もそこから引かれます。
そして最後に手元に残った金額が利益になります。
つまり、返済能力以上の借入れをすると、すぐに資金繰りで行き詰まってしまいます。
ここに、飲食店経営の落とし穴があります。
開業資金を正しく見積もり、資金不足にならないようにするには、開業準備段階の下調べをしっかりすることが重要です。
お金のかかる事柄は、全てできるだけ正確な金額で把握するようにします。
大ざっぱな見積もりは、必ず計算違いを引き起こしてしまいます。
次に、一般的な飲食店の開業に必要な、主な資金の内訳を挙げていきましょう。
・店舗物件取得費
保証金(敷金、権利金、居抜き物件の場合は別途に内装譲渡費が必要)、不動産業者の仲介料、前家賃
・店舗工事費
設計料、内装・設備工事費、外装・造園工事費、厨房設備工事費、看板工事費
・什器備品費、その他
イス・テーブル費、調度品費、レジ費、装飾品費、調理用具・機器類費、食器類費、事務用品費、サンプル費、ユニフォーム費、デザイン関係費(メニュー表、ロゴなど)、消耗品費、開店費(求人費、広告宣伝費、教育・開発費など)
・予備費
予定外費用の予備黄、運転資金
主な費用だけ並べても、これだけの項目になります。
これらを大ざっぱな金額で見積もっていったら、誤差はどんどん広がってしまいます。
そのため、必要なものはすべて書き出し、その一つひとつの項目について、具体的な値段を確認する必要があります。
物件取得では、必要坪数をあらかじめ決めて物件探しをしたほうがいいでしょう。
漠然としたイメージだけで探すと、つい大きめの物件に目が行き予算オーバーになってしまいがちです。
内外装工事も大きな出費なので、業者との綿密な打ち合わせが不可欠です。
厨房機器類や空調設備などのカタログもすべて取り寄せましょう。
メーカーのショールームにも足を運ぶのもいいかと思います。
予備費は総額の1~2割程度が目安です。運転資金は、3カ月分程度は確保しておいたほうが安心です。
開業直後に困らないための事業計画書のつくり方
最初に、事業計画書を作成する目的を考えてみましょう。
一般的に、事業計画書が必要な理由は金融機関から融資を受けるためと考えられています。
実際、融資を申し込む時は、必ず事業計画書の提出が求められます。
金融機関は貸し倒れを最も警戒します。確実性のない事業には融資してくれません。
そのため、金融機関を説得するために、事業に確かな採算性と将来性があることを示す必要があります。
これに必要なのが、事業計画書なのです。
問題はその見通しです。
たとえば、売上高予測を希望的観測だけで見積もっても通用しません。
そもそも、そんな計画書では、まともな金融機関は相手にしてくれません。
借金しなければ、事業計画書が必要ないということではありません。
全額自己資金でオープンしたとしても、安易な見通しでスタートすればいずれ失敗してしまうでしょう。
しっかりとした計画がなく起業しても通用しないのです。
つまり、根拠の確かな事業計画書は借り入れのためであると同時に、事業を確実に成功させるためにも必要なのです。
これを踏まえた上で、事業計画書作成のポイントを解説しましょう。
ポイントは以下の三つになります。
①営業方針と事業の将来性の分析
②開店後の経費と売上計画
③予想損益計画書と資金繰り表
最初に作成するのは、営業方針と事業の将来性の分析、それに基づく借り入れ計画です。
お店の営業方針とその見通しは、店舗物件の立地調査の結果をもとに、お店のコンセプトと確実性、将来性をまとめます。
借り入れ計画で最も大事なことは、投資総額に対してどれだけの借入金を予定するかという点です。
正確に見積もった必要資金額と自己資金を明確にして、根拠のある借り入れ金額を決定することが大切です。
返済計画は一般的には5年間程度の中期事業計画とします。
5年間というのは、飲食店の減価償却期間の平均が5~7年だからです。
5年間を何年も超えるような長期返済や、返済期間を短くするために無理に元金返済額を大きくするのは非常に危険です。
毎月の元金返済額を正常な支払い能力以上に設定すれば当然、損益計画が破綻してしまうからです。
開店後の経費の算出では、初期条件の設定が重要です。
初期条件とは、家賃や減価償却費、返済金など売上高の増減にかかわりなく毎月一定額かかる経費です。
この金額が多すぎると、損益分岐点が上がり利益が出にくい体質になってしまいます。
とは言え、売上高を高く見積もっておけばいいというわけでもありません。
ただの机上の計算では金融機関に説得力がなく、事業としても危険なのです。
だから、できるだけ根拠の確かな売上げ計画を立てる必要があります。
売上計画では、まず必要売上高を算出します。
そして、「好調」「標準」「不調」の三つのケースを予測しておきましょう。
事業計画書の中で最も重要なものは損益計画です。
損益計画は、予想損益計算書と資金繰り表で構成されます。
開店後経費と予想売上高を算出すると、その数字をもとに、月次の損益計算書をシミュレーションとして作成します。
この場合も、「好調」「標準」「低調」の三つのケースを想定します。
売上高を大きくしたくなるものですが、計画書に確実性と説得力を持たせるためには、あくまで客観性のある数字として示す必要があります。
損益計算書には、お店を運営するためのすべての費用が計上してあるため、各費用の割合も明確に示されます。
これは、確実性の高い経営計画を立てているかどうかを判断するための重要な根拠になります。
資金繰り表とは、5年間の資金の流れを一覧表にまとめたものです。
そして資金繰りは、経営を安定させる最大のポイントになります。
資金繰り表の売上高は、予想損益計算書の「標準」を用います。
各費用については、損益計算書と同じですが、ここで大切なのは、借入金の返済計画との整合性です。
飲食店の現金の出入りは、毎日現金が入ってくる上に、様々な支払いがバラバラに来るため、ついドンブリ勘定になってしまいます。
しかし、お金の流れを正確に把握していないと、支払い時に必要な現金が足りないという事態を招いてしまいます。
飲食店の経営が行き詰まるのは、大体資金繰りの破綻が原因です。
破綻を招かない計画を立てることが大切です。
失敗を防ぐための立地調査の注意点
立地調査は、その場所が自店に適した立地条件か調べることが目的です。
より正確にいうと、自店のコンセプトに適合する立地か見極めることです。
そのため、自店にとってどうなのか、ということを念頭に置いて調査することが大切です。
立地の評価は次の二つの要素から判断します。
①商圏調査
②物件の立地調査
商圏調査の目的は、お客様がどれくらい見込めるかを調べることです。
そのためにはまず、商圏設定エリア内をくまなく歩いてみるといいでしょう。
曜日、時間帯、天気の条件を変えて歩くことで、エリアの全体像をつかむことができます。
ここでのポイントは、町のタイプと人の動きを知ることです。
たとえば、出店予定地が商店街なら、その背後にある住宅地が大事なポイントになります。
また、旧住宅地か新興住宅地かで、住人の消費行動に違いが出てくるし、マンションやアパートが多いかどうかも重要なポイントです。
また、いろいろな道路を歩いてみることで人の流れが確認できます。
さらに、どういう人が歩いているかもチェックが必要です。
次に、地元の市役所や商工会で、人口動向や消費水準、職業構成などを調べます。
このとき、事業所や学校についても調べておきましょう。
つまり、想定する業態が成り立つ場所なのか調査することが重要です。
同時に、商圏内とその周辺の飲食店の数や業種業態の傾向も調べておくといいでしょう。
このデータと自分が歩いた調査をあわせると、どんな競合店がどれくらい出店しているかもつかめます。
もう一つ重要なポイントが、町の将来像を調査することです。
役所に行けば、再開発や大型商業施設の計画を教えてもらえるでしょう。
町はどんどん変化します。2、3年後も同じ姿という保証はありません。
大型スーパーが一店できるだけで、人の流れが一気に変わってしまったりするので注意が必要です。
商圏内の様子がつかめたら、物件に引きつけた立地調査を行います。
ここでのポイントは、店前通行量調査と周辺の競合店調査、物件自体の適性です。
まず、店前通行量調査を見ていきましょう。
これは、ただ一日の店前通行量をカウントすればいいわけではありません。
自店のお客様にならない人がいくら多くても意味がないからです。
また、飲食店はその業種業態によって、お客様の利用する時間帯に波があります。
そのピークの時間帯の調査ができて、はじめて意味があります。
そのため、調査の時間帯を1時間ごとに区切り、予定している営業時間帯の前後1時間まで調査するようにします。
ただ、カウンターを使用するほど細かな人数は出す必要はありません。
人数は概算でいいので、男女別、年齢別、職業別の傾向をできるだけ正確につかむことが大切です。
さらに、曜日別の傾向をつかむには、最低でも平日、土曜、休日の3回は調査が必要です。
郊外型のお店の場合、曜日別、時間帯別の車の通行量を調査します。
これは、カウンターを使用しないと厳しいでしょう。
ただしこの場合も、数を調べればいいだけではありません。
たとえば、一台当たりの乗車人数は重要です。一人しか乗っていない車が多い場合、車の数の割に客数が見込めないおそれがあります。
また、車種を見ることで、ドライバーの職業や消費傾向もつかめます。ナンバーをチェックすることで、その車の通行頻度も予想できます。
次に、競合店の調査です。ベストな方法は、お客様として利用してみるといいでしょう。
実際に利用することで、そのお店の実力がわかります。
また、ほかのお客様を観察することで、客層の動向や消費レベルも具体的につかむことができます。
競合店を把握したら、自店の商圏マップをつくり競合店を書き入れてみます。
マップ上でお互いの商圏がどの程度重なっているのかを確認してみると、競合状況が手にとるように分かります。
物件自体の適性は面積や間口の広さなどの要素だけではありません。
ここで注意が必要なことは、立地には立体的なとらえ方もあるということです。
店舗物件は一階とは限りません。
二階、三階もあれば地下もあります。
そして業種業態によっては、一階が有利とは限りません。
二階や地下でも十分に成り立つケースはいくらでもあります。
一階以外の場合、階段やエレベーターの位置、看板の条件などの確認が重要なポイントになります。
また、排気などの問題もあるので注意が必要です。
居抜き物件を活用して得する方法
居抜き店舗とは、内装や厨房設備、空調設備、イス・テーブルなどの什器備品まで、お店の営業に必要なものが一応は揃っている物件のことです。
店舗物件を借りるだけでなく、それらの設備をそっくり譲り受けることになるので、前の借り主に対して造作譲渡代を払う必要があります。
それでも通常は、一般の店舗の保証金に比べてかなり安い費用で借りることができます。
資金の少ない人にとっては、ありがたい存在といえるでしょう。
しかし、メリットがあれば必ずデメリットもあります。
居抜き店舗で成功するには、デメリットもしっかりと検証して判断することが大切です。
たとえば、前の経営者が撤退した理由は気になります。
よほどのことがない限り、前のお店の評判は問題になりませんが、一応は調べておく必要があるでしょう。
また、前のお店を知ることで、前とは違うアピールの貴重なヒントにもなります。
居抜き物件の最も重要なチェックポイントは、設備類がそのまま使えるのかどうかです。
業種業態や調理内容の違いなどの理由から、厨房設備がそのまま使えないなら譲渡された意味がありません。
また、スペースの問題から必要な設備を設置できない場合や、設備が故障しているというケースもあります。
そのため、物件調査の段階で、慎重にチェックしておく必要があります。
設備機器類の性能に問題がなくても、前の経営者がリース代金を滞納していて使えないこともあります。
トラブルを防ぐためにも、仲介する不動産業者にきちんと確認を取ってもらいましょう。
内装やイス、テーブルなどの什器備品類についても、そのまま使えるかどうかを確認します。
ただし、設備や什器備品類で使えないものが出てきたとしても、その物件がダメということにはなりません。
たとえば、前のお店と業種業態がほとんど同じ場合でも、100%そのまま使えることが理想的というわけではないのです。
店舗や設備は譲り受けたとしても、前のお店の経営を引き継ぐわけではありません。
場所と設備類を利用して、まったく新しい自分のお店をオープンするのです。
つまり、居抜き店舗の場合あろうと、新しいコンセプトのお店ということをアピールする必要があります。
むしろ居抜き店舗の場合は、前のお店との違いもアピールしなければいけません。
つまり、内装や什器備品類を手直しすることは、ムダなことにはならないのです。
そこで重要になるのが、その物件の立地条件です。
適合する立地条件は、自店のコンセプトによって決まります。
もし条件に合った物件を見つけたら、店舗の形態にこだわらず、その場所を確保することが優先されます。
極端な話、居抜き店舗の設備すべてを撤去して、お店をつくり直しても得な物件の場合もあり得ます。
このような場所を確保する発想は、飲食店経営において非常に大切なことです。
少しでも安く開業したいという意識が強すぎると、客観的な判断ができなくなってしまうので注意が必要です。
また、居抜き店舗の場合、設備類をそのまま流用すると、自分の思い通りのお店にすることができません。
しかし、お店は白紙の状態からつくればいいというものでもありません。
最も重要なことは、自分の考えるビジネスの場として成り立つかどうかです。
内装が古ぼけていたり、センスが気に入らなかったりすることもあるでしょう。
しかし、その程度のことなら、ちょっとした工夫でイメージを変えることができます。
このように、居抜き店舗は一概に損か得かはいえません。
単純に安上がりだから得とか、中古だから損ということではないのです。
お店づくりの基本は、自分で考えたコンセプトです。
その実現のために活用できるかどうかを、冷静に判断することが大切です。
できるだけ安く店舗を借りるための交渉術
貸し店舗の家賃や保証金には相場があります。
基本的にはそのエリア内での金額で、不動産業者と家主が相談して決めたものです。
少しでも安く借りるためには、まずこの相場をよく研究する必要があります。
隣の駅のエリアなど、似たような条件のほかのエリアの相場も調べてみるといいでしょう。
それと同時に、エリア内の物件の相場や立地条件、店舗自体の様子などもできるだけ詳しく調べます。
これらの調査は、業者と交渉をするために値下げ要求の根拠を準備しておく必要があるから行います。
どんな契約も「交渉」がつきものです。
店舗の契約でも、家賃・保証金の金額だけでなく、物件自体の条件など交渉すべきことはたくさんあります。
ただし、交渉というのはお互いに条件を出し合い、粘り強く話し合いながら少しでも有利な結果に導くことです。
一方的に値下げを要求してもそれは通りません。
あなたと業者と家主が皆、納得できる落としどころを探すのが交渉なのです。
業者との交渉では、提示された金額を鵜呑みにしないことが基本です。
とは言え、物件を決めているなら、手付金はできるだけ早く支払っておく必要があります。
なぜなら手付金は、業者との交渉権を確保するためのものだからです。
交渉の場では、物件のプラス面とマイナス面をチェックしながら話を進めていきます。
この時、同じような条件でもう少し安い物件があるとか、物件自体に少々問題があるといった材料が必要になります。
ただし、マイナス面ばかり指摘して、値下げを要求する態度では交渉はうまくいきません。
物件が気に入っているので、マイナス面は経営努力でなんとかカバーしたいという姿勢を示すことが大切です。
できれば家主に直接会わせてもらい、自分の情熱と人柄を売り込むといいでしょう。
家主は空き店舗にはしたくないし、家賃は多少安くてもきちんと払ってくれるテナントを求めているものです。
交渉のカギを握っているのは不動産業者です。業者に気に入ってもらい味方につけることが、値引き交渉を有利に運ぶ最大のポイントになります。
いい物件を見つけると焦って本契約をしてしまいがちですが、それでは損してしまいます。なぜなら、契約した時点から家貨が発生してしまうからです。もし内装工事が長引いたりしたら、無駄な家賃を払い続けることになります。
業者との交渉では、家賃・保証金の値引きだけでなく、家賃の発生を遅らせることも忘れてはいけません。
間違いない設計・施工業者を選ぶポイント
設計・施工業者を選ぶ時の最大のポイントは、飲食店専門の業者を選ぶことです。
当たり前のようですが、意外と盲点になっています。
一見、業者はどこも似たように見えますが、専門分野はそれぞれ違います。
何でもやりますという業者もありますが、それは得意な分野は特にないということです。避けたほうが無難といえるでしょう。
たとえば設計を見てみましょう。店舗の内外装のデザインだけなら、専門外の業者でもできます。
しかし、飲食店としての機能とコンセプトを形にするのは簡単ではありません。
お店は、見栄えがよければいいというものではありません。
カウンターの幅や高さだけでも、お客様の居心地がかなり違ってきます。
施工面では、内装、厨房、空調の各工事を一括して任せられる業者がベストです。
担当工事の業者が別々だと、工事予定がずれるなどトラブルの元になりやすくなります。
このようなことから、職人、監督を社内で抱えている業者を選んだほうがいいでしょう。
下請けに丸投げするような業者では、責任の所在が曖昧で問題が生じた時に苦労をすることにもなりかねません。
また、厨房機器類や空調設備のメーカーや販売店に、太いパイプを持っていることも大事なポイントです。
機器類は価格が高いので、必要最小限で最大の機能を発揮できる厨房や空調設備にするためには、このパイプは絶対に不可欠です。
そして、その業者がこれまでにつくったお店を見せてもらい、自分の目で実績と実力を確認するようにします。
内装は、細かい仕上げなども入念にチェックするようにし、厨房内も業者から店主に頼んでもらい、実際に見せてもらいましょう。
業者選びで失敗を避けるためには、最低3社の業者から相見積もりを取って、内容を比較検討します。
「○○一式」という項目が多く、個々の数量や単価、種類などが省略されている業者は注意が必要です。
機器類、什器備品類に関しては、すべてカタログか実物で確認することも忘れてはいけません。
また、安ければいいというわけではありません。
総額が安い代わりに、必要な項目が抜けているケースもあるので注意が必要です。
また、地元の業者の中から選んだほうが、問題が生じた時やアフターサービスの点で有利なことが多いです。
打ち合わせでは、自分のコンセプトと店舗イメージをできるだけ正確に伝える必要があります。
これが意外と難しく、時間をかけて説明しなければなりません。
この打ち合わせを面倒がるような業者は、実績があっても避けたほうがいいでしょう。
なぜ看板にお金をかける必要があるのか
飲食店で成功するためには、とにかく目立つ必要があります。
ひとりでも多くの人に、自店の存在を知ってもらわなくてはなりません。
そして、存在を知ってもらうために必要なものが看板です。
看板がなかったら、だれもお店に気づいてくれないでしょう。
看板は、それほど重要な意味を持っています。
通行人は、看板を見てはじめてお店の存在に気づきます。
看板が目に止まらなければ、お店はないも同然です。
つまり、通行人の目に止まらない看板は、その役割を果たしていません。
看板は、出していればいいというものではないのです。
特に小規模店の場合、一階の路面店であっても、間口が狭いためお客様に気づいてもらえません。
二階や地下の場合、さらにそのリスクが大きくなります。
看板で最も大切なことは、遠視性に優れていることです。
遠くからでも、そこに何のお店があるのか分からなければならないのです。
通行人は、ある程度遠くからお店を識別できた時にお店のことが気になります。
お店の前で気づいても、なんとなく通り過ぎてしまうのです。
看板に遠視性を持たせるには、看板自体の大きさとデザインが重要になります。
看板の役割は、遠くからでもひと目で何のお店か分からせることです。
そのため、できるだけ目立ち、分かりやすいデザインと大きさの看板をつくる必要があるのです。
シビアな競争を勝ち抜くためには、とにかく目立たなくてはいけません。
お金はかかりますが、目立つための投資をケチってはいけません。
また、看板に遠視性を持たせるには、取り付ける位置も非常に重要なポイントになります。
ふつうの飲食店の立地では、周囲に飲食店が何店も出店しています。
そして、それらのお店も看板を出していますし、飲食店以外の看板もたくさんあります。
つまり、障害物だらけの状況なのです。
これらの障害物に邪魔されず、遠くからでも最もよく見える位置を探すことが重要です。
飲食店の経営者は、自分のお店は知られていると思い込みがちです。
しかし、それは思い込みです。地元の人でも、自分が興味のある建物や店舗しか見ていないものです。
今でもサンプルケースが必要な理由
お店の前にメニュー表を置くお店が増えています。
デザインに凝っているものもあれば、お店で使っているメニュー表をそのまま立て掛けているケースもあります。
その目的は、自店の商品と価格を明確に示して、お客様の利用動機を誘おうとしているのです。
ではなぜ、こんなことが必要なのでしょう。
飲食店の価値は、実際に入って利用してみなければ分かりません。
だれにとっても、初めてのお店というのは不安なものです。
初めてのお店が不安な理由は、お店についての情報がないからです。
看板や外観から業種は分かっても、他店との違いや雰囲気など迷う材料はたくさんあります。
なかでもお客様にとって最も不安なことは、価格と商品の内容です。
業種が分かったとしても、予算が分からなければ利用することはできません。
また、業種だけではどんな料理を提供しているお店か分かりません。
食べたいメニューがなければ、利用する意味がないのです。
また、メニュー名は同じでも、お店によって味もボリュームも違います。
店前でメニュー表を掲示するお店が増えているのは、お客様の不安を少しでも解消するためです。
通行人は、情報がなければ入店する判断ができないのです。
サンプルケースは、情報提供の最も基本的で効果的な方法です。
なぜなら、商品の内容をズバリ訴求できるからです。
ところが、サンプルケースをおいているお店は少なくなっています。
これは、サンプルケースのアピール力がなくなったためではないのです。
サンプルケースの多くがただ出しているだけで、ケースの中がホコリだらけだったり、サンプルが色あせていたりします。
これではかえって逆効果で、料理がまずそうなイメージを与えてしまうし、お店の清潔感も損なってしまいます。
しかしこれは扱い方の問題で、サンプルケース本来の機能がなくなったわけではありません。
お店のコンセプトによっては、サンプルケースよりメニュー表をオシャレに掲示したほうが効果的な場合もあります。
しかし、いずれにしろ店前でお店の情報を掲示する必要はあるのです。
最小限の出費でお店をつくるポイント
お店づくりに投資する理由は、お客様に喜んでもらいその結果として利益を得るためです。
ビジネスとして飲食店を経営するのなら、すべてこの視点で考える必要があります。
たとえば、客席ホールの内装はついお金をかけすぎてしまいがちです。
これは、いいお店をつくりたいという自己満足を追求してしまうからです。
しかし、お店づくりで最も大事なことは、「お客様にとってのいいお店」を追求することです。
お客様にとっていいお店とは、居心地がいいお店、気分よく過ごせるお店、食事を楽しめるお店です。
つまり、自店の業態に合った内装であればよく、業態にそぐわない高級感は居心地感を悪くしてしまいます。
また、できるだけ長くもたせるという考えも捨てる必要があります。
店舗は基本的に、一定の期間で償却していくものです。
そのため税金でも、減価償却費が認められています。
高級業態で内装にお金をかけなければならないケースなら、その投資を回収するために長くもたせる必要があります。
また、そういうお店なら、長く使い込むことで味が出てきます。
しかし、このようなお店をつくるには、おおきな投資が必要です。
逆に、高級業態でも、内装にあまりお金をかけず、カジュアルな雰囲気にして成功しているお店もあります。
業態を画一的に考えず、さまざまな利用動機からターゲットを絞り込んでいくと、いろいろなお店づくりの発想が生まれます。
最悪なケースは、中途半端にお金をかけてしまいそのまま営業し続けることです。
売上高に見合わない投資をしたため、改装したくてもできず内装はどんどん古くなってしまいます。
いまは、新しいお店が次々とオープンし、お客様のニーズもどんどん変化する時代です。
魅力もなく鮮度を失ったお店は、お客様に支持されることはありません。
できるだけお金をかけずに一定レベル以上の内装にする基本は、業者任せにしないことです。
業者に依頼するのは、素人にできない部分だけにとどめます。
内装のベースだけ業者につくってもらい、装飾品や家具、調度類、置物、花などを添えていくことで、自分なりの演出を加えていくという方法です。
このほうが安上がりというだけではなく、自店らしい個性を表現しやすいというメリットもあります。
気持ちの込められた内装は、人の心に訴えるものが必ずあります。
また、業者への依頼は、材料よりもデザインを優先することも大事なポイントです。
材料にあまりお金をかけなくても、センスのよいデザインならお客様は満足してくれるものです。
コンクリートの打ちっぱなしの壁は、その好例でしょう。
飲食店では、厨房関係にも大きな金額が必要です。
当然、ここでも節約を考えなくてはなりません。
この基本は、新品だけにこだわらないということです。
中古の厨房機器類を扱う業者も増えているので、まずは探してみましょう。
中古品といってもいろいろあります。機能も見た目もまったく問題ないものも少なくありません。
厨房機器類はオープンしたての時はピカピカでも、一年もすれば汚れたり傷ついたりしてきます。
クレンリネスを心がけても、古びてくることは防ぐことができません。
それなら、中古品を買って磨き込んでも同じことです。
重要なことは、必要な機能がきちんと働くかどうかなのです。
また、機器類が本当に必要なのか十分に検討することも大切なポイントです。
厨房内の作業の流れや人手の数、メニュー内容、想定客数などを考え、どうしても必要な場合は購入するようにします。
絶対に必要な機器類以外は、とりあえず購入を後回しにします。
これをきちんと判断してから厨房設計を依頼するようにしましょう。
ただし、電力工事やガス、水道の工事が必要な場合は、オープン後に導入すると余計な工事費がかかります。
また、営業を休まなければならないケースも出てくるので注意が必要です。
トラブルを防ぐ工事契約での注意点
店舗の内装工事は、それほど大変な工事ではありません。
しかし、それでも思わぬトラブルが発生することがあります。
たとえば、完成予定日に間に合わないとか、追加工事が必要になるなどです。
お店にとって最も痛いのは完成日の遅れです。
メニューの試食、スタッフのトレーニング、広告宣伝など、オープンの計画が狂ってしまうため、大変な損害になってしまいます。
追加工事に関しては、業者の見積もりから漏れていたこともあるため注意が必要です。
この場合、追加料金に応じる必要はありませんが、業者もそうはいかないのでトラブルになってしまいます。
こうしたトラブルの発生はある程度予測できるので、あらかじめきちんとした契約書を作成し責任を明らかにしておく必要があります。
契約書があることで、お互いの損失を防ぐことができるのです。
通常、工事契約書は業者が用意しているので、じっくりと内容を確認することが大切です。
特に、両者の利害関係に関する事項は特約事項などでまとめて書かれているので、内容を業者に確認するようにしましょう。
契約書の特約事項や特記事項は、大抵非常に小さな字で書かれています。
そのため、つい読まずに契約してしまいますが、これでは大きなリスクを伴います。
トラブルの元になる原因は、ほとんどが予想できることばかりです。
特約事項にはその解決方法が書かれているので、まずはこの内容の確認が基本になります。
最低でも明記すべき特約事項は、以下の3点です。
①契約金額をオーバーしないこと(設計通りである限り、追加料金は認めない)
②引き渡し日が遅れたら遅れた日数分の営業保証をすること
③完成後、一定期間のアフターサービスを必ず履行すること
これらの条件は契約前の話し合いで確認が必要ですが、契約書にもきちんと書かれていることが重要です。
また、トラブルを引き起こさないようにするためにも、見積書と図面の検討も慎重にしなければなりません。
ちなみに、引き渡し日が工事完成日ではありません。
見積書通りの工事内容で、設計通りに仕上がっているか確認する日が引き渡し日なのです。
契約書に工事が遅れたり、補修工事の必要が生じたりした場合の対処の仕方も明記する必要があるのもそのためです。
契約事に口約束は禁物です。トラブルを未然に防ぐには、契約書が必須なのです。
店舗引き渡し時のチェックポイント
店舗引き渡し日は店舗の完成日ではありません。
工事が見積書の内容通りに行われたかどうか、確認する日なのです。
契約書も取り交わしているからといって、工事の確認が終了してからでいいというわけではありません。
工事期間中もできるだけ現場に足を運び、進行状況をチェックするべきです。
工事期間中はほかのオープン準備も色々とあるでしょう。
しかし、業者に任せっぱなしではいけません。
現場に顔を出すといっても工事に関しては素人なので、設計図通りに進んでいるかはわからないでしょう。
確認できるのは、工程表との遅れはないかどうかくらいかもしれません。
それでも現場に行く意味がある理由は、工事をしている人たちと親しくなれるからです。
なんでもいいから、必ず差し入れをして声をかけるのです。
こんなことでもずいぶんと気分が違ってきます。
気分が違えば、細部の仕上がりなどが違ってきたりするのです。
また、工事中なら手直しがしやすいということもあります。
設計を変更する場合は多少の追加料金がかかりますが、完成後の変更よりは安上がりでしょう。
工事の人たちと親しくなっていれば、ちょっとしたことなら無料でやってくれることもあります。
店舗引き渡し日のチェックは、時間をかけて端から端まで入念にチェックする必要があります。
しかし、やっと店舗が完成したという気持ちが強いと、つい細かい部分に目がいかなくなってしまうので、冷静にチェックするように注意してください。
具体的には、まず造作の仕上がり具合をチェックします。
柱や板の端がきれいに切られているか、壁の塗り具合はどうかなど、丹念に見ていく必要があります。
あちこちを一度に見ると見落としが生じるので、部分で確認することが大切です。
ドアや窓などは、何度も開閉してみて立て付け具合を確認しましょう。
ここは、安易に妥協してはいけません。立て付けは、悪くなることはあってもよくなることは絶対にありません。
つまり、どんどん使いづらいお店になってしまうということです。
また、スイッチのあるものはすべて、ある程度の時間動かしてみましょう。
特に空調設備はある程度の時間運転させてみないと、効き具合がわかりません。
チェックの結果、問題がみつかった場合は補修工事をしてもらいます。
最終的な仕上がりを確認してはじめて完成となるのです。
お店の品質を決める食材業者を選ぶポイント
飲食店にとって、食材業者は最も大切なビジネスパートナーとなります。
料理は食材によって大きく左右されますし、食材がないと営業することすらできません。
つまり飲食店は、食材業者によって商品力を大きく左右されてしまうということです。
そのため、業者の力量をしっかり見極める必要があります。
とは言え、調理師の経験がない人が食材業者を見極めるのは簡単なことではありません。
しかし、いい加減に仕入れていては、競争が激しい時代に生き残ることはできません。
業者を見極めるためには、まず食材を知ることから始めなければなりません。
そして、業者選びで大事なことは常に比較検討することです。
たまたま見つかった一社で決めてしまわずに、何社かを比較して慎重に決める必要があります。
主要な食材に関しては、最低でも三社から相見積もりを取ったほうがいいでしょう。
問題は見積もりの比較の仕方です。価格を優先してしまう傾向がありますが、安く仕入れることができればそれでいいというわけでもありません。
いくら安くても、品質に問題があってはマイナスになってしまいます。
逆に、いくら品質がよくても、仕入れ価格が高すぎては利益が出ません。
また品質といっても、お店の業態に合わせて考えなければ、適正な原価率を維持することはできません。
品質と価格は、その業者の品物を自分の目で確かめてみることが大切です。
そして、品質に問題がある場合は返品に応じるように交渉しなければなりません。
他の業者や販売店の品物もできるだけ見て、比較できる目を養わなければなりません。
そのため、食材業者は数多く当たり勉強する必要があるのです。
最初は分からなくても、いろいろ見ていると自然と見る目が肥えてきます。
また、生鮮品に関しては、配送の問題も大きなポイントになります。
食材の仕入れで大事なことは、、、
①品切れを起こさない
②過剰な在庫を抱えない
この二つの条件を常に満たすことです。
そうすると、お店の使用量や使用頻度に合わせて配送してもらう必要が出てくるのです。
そのため、業者の通常の配送ルートと何日おきに配送してくれるのか、急な注文に応えてくれるのかを、しっかりと確かめておく必要があります。
価格や品質に問題がなくても、配送で支障が出るようなら、やめておいたほうが無難でしょう。
また、業者によって得意、不得意があるので、全て一つの業者から仕入れることは避けましょう。
必要なら、食材によって三社、四社と取引するべきです。
後々苦労するスタッフ募集の失敗パターンとは?
優秀なスタッフはお店で育てる必要があります。
ここを間違えると、いつまでもスタッフのことで悩まされることになります。
募集方法は様々なものがありますが、最適な媒体というものはありません。
お店の壁に張り紙をしておくだけでも、求めていた人が来てくれることもあります。
大事なのは、媒体ではありません。お店側が、来て欲しい人を明確にすることが最も重要です。
スタッフといっても、通常はパートやアルバイトです。
そのため、最初からたんなる「人手」程度に考えてしまう人もいますが、それでは優秀なスタッフが育つはずがありません。
実際にお客と接するのはスタッフです。お店のコンセプトを表現し、自店だけの付加価値として実現していくのはスタッフなのです。
だから、飲食店の本質を知っている経営者は、スタッフ募集のことを常に念頭に置いています。
お店にはどんな人が必要で、どうすればオープンに間に合わせることができるか考えてオープン準備を進めるのです。
オープン日にある程度の仕事ができるようにするには、事前の教育訓練が必要です。
そのため、早めに募集をかけなければなりません。
そして、募集をかける段階では、採用する人の基準が明確になっていなければならないのです。
オープン準備では、店舗や料理のことに気がいってしまい、人の問題が軽視されがちです。
しかし、確実に人を集めるためには、お店の内装工事にかかる時点で、募集計画を固めておく必要があります。
募集の効果を上げるには、まず応募したくなるよう募集方法を考える必要があります。
お店側が「いい人」を求めているのと同じように、働く人も「いいお店」を求めているのです。
パートやアルバイトだからといって、どんなお店でもいいとは思っていません。
人は、「自分の力を試したい」「能力を発揮したい」と思っているものです。
そういう人の目に止まる募集方法が必要です。
たとえば、自店のよさをアピールしてもいいでしょう。
めざしているお店の姿と、楽しく働けて自己実現ができるお店ということを、応募者にアピールするのです。
長々と説明する必要はないので、簡潔にお店のよさをまとめてみましょう。
待遇面については、できるだけ詳しく具体的に書きます。
数字で示せることは、はっきりと数字で出すことが大切です。
最低限明記すべきことは、給与、勤務時間、日数、交通費・食事の支給の有無です。
特に大事なのは給与で、時給だけでなく最低でも月にどのくらい稼げるのか示すといいでしょう。
ちなみに、給与については能率給の導入がオススメです。
一所懸命に働けば、それが給与で評価されることを明確にすれば、応募者の動機つけとして効果的でしょう。
また、紹介による採用はできるだけ利用しましょう。
紹介者が応募者の人柄を知っているから安心できるうえ、一般的に定着率も高くなります。
調理師を雇う場合は、キャリアだけでなく、お店の規模やメニュー内容に合う仕事ができる人か判断しなくてはなりません。
これまでのキャリアや技術が生かされなければ、意味がなくなってしまいます。
なぜ就業規則が必要なのか
複数の人間が働く場では、働く全員が守るべき一定のルールが不可欠です。
そのため就業規則は、お店の規模や経営形態に関係なく必要です。
小規模の飲食店の場合でも、整備しておいたほうがいいでしょう。
まずは雇用関係です。人を雇う時に最も大切なことは、お互いに約束事を守れるかです。
ここでいう約束事とは、入店時に提示した雇用条件です。
この条件が口約束ではいけません。口約束では細かな内容は規定できないから、給与と勤務時間、勤務態度、遅刻・欠勤に関してくらいしか約束できないでしょう。
しかし、それも明文化されていなければ、経営者の都合で変わってしまう可能性があります。
これでは、スタッフの勤務態度に問題があっても文句は言えません。
次に、スタッフ同士の関係でもルールは重要です。
たとえば、辞められてしまっては困るからと、遅刻や欠勤を大目に見るということがあります。
しかし、全員が遅刻したり欠勤したりしているわけではありません。
これでは、遅刻するほうがトクという考え方にもつながります。
さらにヤル気のあるスタッフのほうが、イヤ気がさして辞めてしまうことにもなります。
就巣規則は、スタッフを縛りつけるものではありません。
スタッフが、楽しくヤル気を持って働けるようにするために必要なのです。
飲食店の仕事はすべてチームワークです。
経営者とスタッフ全員が気持ちを一つにお客様をもてなすことで、お店としての付加価値が高まっていきます。
その気持ちをつなげるための基礎となるのが、就業規則なのです。
スタッフが働きやすくなれば、自然とお店の運営もスムーズにいくようになります。
就業規則では、雇用条件のほか、すべきこととしてはいけないことを箇条書きにし、なぜその順守が必要なのかを分かりやすく明記しておく必要があります。
たとえば順守事項には、以下のようなものがあります。
・勤務時間中の禁酒・禁煙
・商品・備品の盗用の禁止
・スタッフ同士、およびお客様との金品の貸借の禁止
・お客様とのトラブルの禁止
・各種マニュアルの順守
基本的には、常識で考えれば当然のことばかりです。
本人たちに悪気がなくても、悪気はなくても、厨房の陰に隠れてタバコを吸ったり、冷蔵庫の材料を食べたりすることが多いのです。
しかし、それを見逃し始めたらきりがなくなってしまいます。
長くお店を続けるための営業時間と休日の決め方
一般的に、飲食店の営業時間は業種業態ごとにある程度決まっています。
休日も、週の中をとって水曜と木曜に集中する傾向があります。
しかし本来、営業時間は業種業態だけで決めるべきことではありません。
立地が違えば、同じ業種業態でも別の時間帯の営業が有利になるはずです。
営業時間の設定で最も大事なことは、できるだけ多くのお客様を効率よく稼げるように設定することです。
明確な理由もなくダラダラと営業するのは、人件費と光熱費をムダにするだけです。
営業時間は、コンセプトによって決定しなくてはなりません。
そして、出店立地もコンセプトによって決定されなければならないということです。
つまり、綿密な立地調査が、営業時間決定の最も合理的な根拠になるというわけです。
立地調査では、店前の通行量を調べます。
どの時間帯にどんな客層がどれくらい通るのか調査すれば、どの時間帯にどんな利用動機が発生するかを予測することができます。
この調査をきちんとやっておけば、開店時間は比較的簡単に決められます。
しかし、閉店時間は工夫が必要です。お客様は、入ってすぐ閉店になるお店には入りたがりません。
のんびりできないのなら、他のお店を探します。
そのため、お客様が見込める時間帯に、一時間ほどプラスして設定する必要があります。
ただし、少しでもお客様がほしいからと、営業時間を延ばすことはやめておいたほうがいいでしょう。
お客様が多少増えたとしても、無理をしたら長続きしません。
疲れがたまってくれば、仕事もつまらなくなります。
また、帰りの時間が気になれば、お客様への対応までおろそかになってしまいます。
これは休日の設定でも同じです。
最近では、年中無休の飲食店が当たり前になっていますが、これを真似する必要はありません。
飲食業は見かけ以上に重労働です。体を壊してしまったら、長く続けていくことができなくなってしまいます。
休日の設定は、定休日にすることが大事です。
予告もなく休んでは、お客様を裏切ってしまうことになります。
ただし、休む曜日は慎重に決めるようにしましょう。
オープンの成功を決めるオープン前トレーニングの実施手順
基本的に、飲食店は経営者ひとりでは運営できません。
経営者が調理を担当すれば、調理のサブスタッフと接客サービスのスタッフが必要です。
また、経営者がホールを担当する場合は、調理スタッフが必要になります。
ひとりでできないということは、優秀なスタッフがいない限り、売上げを上げ経営を安定させることはできません。
飲食店の付加価値はすべて、スタッフがつくり出します。
経営者は、常に必要な人員を確保し、優秀なスタッフへと教育・訓練しなければならないのです。
飲食店はオープンしたその日から、プロの集団でなければなりません。
お客様からお金をいただくのだから、当然のことです。
つまり、スタッフのトレーニングは、お店のオープン前に済ませておく必要があるということです。
もちろん、オープン日にプロの集団というのは、現実にはかなり難しい条件です。
しかし、確実に成功するためには、少しでも理想に近づくように努力する必要があります。
慣れていないという言い訳は通用しないのです。
オープン時の失敗は、なかなか取り返しがつかないものです。
実績のあるお店なら、一度や二度の失敗は許してもらえます。
しかし、新規開店のお店には実績がないので、その失敗だけですべてを評価されることになります。これが第一印象の怖さです。
未経験のスタッフの場合、最低でも三日から一週間のトレーニング期間は必要です。
そのため、オープン予定日の三日から一週間前には内装工事が完了し、スタッフもスタンバイの状態にしておく必要があります。
トレーニングの方法は、頭で覚えるトレーニングと体で覚えるトレーニングに分けて実施すると効率がいいでしょう。
予備知識を教えておいてから、実践トレーニングに入るのです。
トレーニングに必要な予備知識は、メニュー名と価格、メニュー名の省略の仕方、飲食店スタッフとしての心得です。
メニュー名と価格は、メニュー表のコピーを渡して暗記してもらえばいいでしょう。
メニュー名の省略は、お客様のオーダーを厨房に通す時のルールです。
メニュー名をそのまま利用すると、長くなりがちでオーダーミスが起きやすくなります。
そのため、ラッシュの時間帯になると、間違いなくパニックになってしまいます。
飲食店スタッフの心得は、サービス業の一員としてお客様に感謝し尽くすという心構えと、他のスタッフとのチームワークを大切にすることです。
これはスタッフ教育の要なので、オープン後も教えていく必要があります。そして、スタッフの一員になる以上は、最初からしっかりと認識させておくことが重要です。
実践トレーニングはマニュアルを使って行います。たとえば、サービススタッフの訓練の場合は、、、
①発声訓練
②動作訓練
の二つが中心になります。
発声訓練は、「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」といった、サービスの基本用語を繰り返し発声することで、完璧に身につけることを目的としています。
サービスの基本用語は簡単な言葉ばかりです。難しいことではないはずなのですが、この当たり前のことを完璧にこなすことが難しいのです。
動作訓練も、難しい訓練ではありません。
お客様に好感を持たれるのは、スタッフのキビキビしたさわやかな動きです。
見ていて気持ちがいいし安心感があるので、お客様はゆったりとした気分で過ごすことができるのです。
しかし、メリハリのない動作だとだらしない印象を与えてしまい、不安を感じさせてしまいます。
これでは、固定客になってくれません。
スタッフの動作一つで、お客様の印象に大きな違いが出てしまうので、徹底的に教え込む必要があります。
スタッフのトレーニングとして大切なことがあと二つあります。
一つは、スタッフとしての心得は、知識として知っているだけでは何の意味もないことです。
その心構えが、自然にお客様に接する態度や表情に出るまで教えることが重要です。
そのため、発声訓練と動作訓練を行う時は、ただ繰り返すだけではいけません。
その発声や動作、表情の中に、自然とお客様を大切にする心がこもるよう、注意深く指導する必要があります。
この教育部分が抜け落ちていると、形ばかりのマニュアルサービスになってしまいます。
サービスにマニュアルを使うのは、あくまで均質なサービスを提供するためです。
もう一つは、オープン前に料理を全品つくって、厨房、ホールの全員で試食してみることです。
これも大事なトレーニングの一つとなります。
これをやっておかないと、お客様に料理の内容を聞かれた時に答えることができません。
また、食べて魅力を知っていないと、お店のメニューをオススメする言葉に説得力がありません。
開店宣伝で最大の効果を上げる方法
開店宣伝で最も問題となるのは、そのやり方です。
広告宣伝は、方法によって効果に天と地ほどの違いが出てしまいます。
しかも、いまは飲食店のオープン自体が別に珍しくないので、お客様にとっては騒ぐほどのこともない出来事なのです。
どのような販促を行うにしろ、やり方が重要となります。
中途半端な取り組みでは効果は期待できません。告知とは反復で、何度も何度も繰り返すからこそ威力を発揮します。
オープン後一週間くらいは、徹底してチラシを配布するくらいの意気込みが必要です。
また、事業所が多いエリアなら、メニュー表とサービス券持参のセールスが効果的です。
セールスでの注意点は、事業所の規模や見栄えで訪問先を選んではいけないということです。
セールスは、シラミ潰しにやってはじめて効果が出ます。
事業所へのセールスは、店舗の工事期間中からオープンまで、三回程度は訪問するようにします。
そしてさらに、オープン後は駅前などでチラシ配りをするのです。
オープン時に誤解してはいけないのは、新しいお店ができただけで来店してはくれないということです。
新しいことは大きな魅力ですが、お客様にとって未知数というリスクもあることを忘れてはいけません。
実績のないお店に来てもらうためには、お客様が納得できるメリットを提供する必要があります。
そして、開店サービスは、思い切った内容で実施しなければ、お客様を引きつけることはできません。
たとえば、三割、四割引きのサービスと聞くと、「いってみよう」という気になります。
価格だけでなく、期間も一カ月くらいは設けて、本当の「サービス」にする必要があります。
話題になるサービスを提供することで、口コミも期待できるのです。
サービス分は宣伝広告費と考えれば問題ありません。
飲食店を出店するときは準備を忘れずに
以上が新規出店に必要な準備になります。
やるべきことがたくさんあり大変ですが、一つもモレなく準備しなくてはお店を繁盛店に導くことはできません。
ぜひしっかり準備して、開店直後からスタートダッシュを切ってくださいね。